Myanmar Yangon
2019年11月19日18時半、東京からタイ経由でミャンマーの最大都市ヤンゴンMINGALADON空港に到着しました。3泊4日の滞在です。
「最後のフロンティア」と言われるミャンマー。 タクシーの運転手は民族衣装のロンジ―を纏い、手にはスマートフォンを携え将来への希望を語り街中を疾走します。数十年の軍政と停滞の後にガラケーを飛び越して手に入れた最新の情報機器と将来への希望。今のミャンマーを象徴しているように思えます。
19時、空港からホテルまで移動中のタクシーから見たヤンゴンは、庭園とも空地ともつかない暗い空間と密集した樹木、そこだけが明るい低層の建物群、路上に佇む人たちと屋台、そして突然に視界に入る大型ビルの窓の灯り。ヨーロッパでもアメリカでもむろん日本でも見たことのない捉えようのなさは、この街が停滞から急激な発展の鳥羽口にあることを感じさせるものでした。
ミャンマーの最大都市ヤンゴンはミャンマーの中央デルタ地域に位置し、 商店やアパートの密集地域、広大な敷地の屋敷と空地、広い公園、そして近年建設された大型ビルがパッチワーク状に繋っています。
都市の南部中央に金色のシュエダゴン・パゴダ(仏塔)と広大な公園(以前は軍の施設だったと聞いています)さらに南には植民地時代の旧市街と中央駅があります。 北部は住宅と大学や商店街が漠然と広がり、そこにも湖と公園が広がります。旧市街は東西と南を河に遮られているため新市街が北に向かって発達したのでしょう。植民地時代に整備された幹線道路は広く旧市街は碁盤の目状に整備されています。(ただし歩行者など眼中になく車がスピードを上げて走り、ひどい渋滞が日常化していることが後にわかりました)
夜が明けてホテルの窓から見えたのは、老朽化した木造家屋と空地、塀沿いの側溝の上には屋台で朝食をとる人。その向こうには新しいショッピングモールの建築現場のクレーンが見えます。ここは決して街はずれではなく中央駅の近く。
このような簡単な椅子とテーブルを並べただけの屋台は街のいたる所に見られます。調理設備のない住居も多く、外食やテイクアウトで食事を調達する人たちが多いようです。旅行前に屋台での食事はしないことと忠告を受けましたが、この衛生状態では食べることはできませんでした。
下水道替わりなのか雨季の雨を流すためなのか街中の道路脇には排水路が設置されています。
中央駅から北に向かってシュエダゴン・パゴダ(仏塔)に至るエリアは大きな屋敷と空地、敷地の入り口に警備員のいる集合住宅、そして商業ビルが少々、それらが混在しています。町の中心に広い敷地の屋敷が広がる(そして空地も)ことに驚かされました。 広大な敷地は富裕層の屋敷あるいは軍の施設、空地は富裕層が郊外に屋敷を構えたために放置されている敷地であると、現地に住む人の説明がありました。
集合住宅の多くは老朽化していますが自家用車を所有していることから、それなりの収入がある人たちの住居とわかります。現在住宅の需要が逼迫し、家賃は東京並みに高沸しています。住居を持たず十分な収入もない人たちは道路脇のあるいは街外れのバラックに居住せざるを得ません。
すでに外資(主に中国資本)による投資用の物件転がしの話も聞こえてバブルの到来を予感させます。今後も経済成長が続けば建設用地は潤沢ですから新築あるいは建て替えが増え、住宅市場は活況となるかと感じました。
経済成長とは誰もがよりよい生活を得ることの可能性と置き換えることもでき、この都市はそれが人々の前に具体的に立ち現れていると考えうるのではか、そのように感じました。
駅の西方には国立のヤンゴン総合病院があります。ミャンマー最大の医療施設ですが建物は旧式です。夕刻には病院前の道路に屋台が立ち並び、夕飯を買って病院内に戻る人や道路際で食べる人などでいっぱいになります。これらを見る限り医療設備が充実しているとは思えませんし、受けられる医療水準も期待はできないでしょう。しかし2019年4月29日付の日経新聞によれば、日本の資金援助により日本設計の設計、大成建設の施工で最先端の設備を備えた新病院が2021年に竣工するとのこと。それに伴い医療技術者、医療機器、医療技術者、建物や機器のメンテナンスなど付随する高度な医療関連のニーズが発生すると思われます。技術は停滞しているが無いわけではない、より高度な技術を差し込むことで停滞していたものは前に動く可能性があり、その技術を支える多くの産業もまた進歩し活性化する可能性があるということでしょう。
ミャンマーは長い経済停滞の時期が続き都市のインフラの整備が立ち遅れています。電気はその最たるもので、夏季は頻繁に停電が起き、ヤンゴン市内でも高級なアパートメントには自家発電装置が用意されているとのこと。まして郊外であれば、いまだに電気のない家屋も珍しくないと聞きます。
街を歩くと、都市が効率を上げて機能するためには、すべてにおいて、まずインフラの整備が急務であることが理解できます。 それは克服すべきことが明確であり成長とより良い未来への道筋が見えている(実現できるか否かは別としても)ことに他なりません。
ヤンゴン総合病院の前で見かけた親子。病院関係者でしょうか、小ざっぱりとした身なり、子供は学校の制服を着て、リュックにはディズニーのキャラクターが描かれています。
女性の社会進出は日本よりはるかに進んでおり上級管理職につく女性も多いとのこと。 この国を旧式な生活のインフラしかない素朴な未熟な国家としてステレオタイプ化することはできません。複雑な事情によって経済的あるいは物理的な面での立ち遅れを余儀なくされているが、すでに、理由はなんであれ、一歩先んじていることもあるのだと、そしてそれは少なからず将来への可能性を支えているのではないかと、このまっすぐに前を見て歩く親子の背中を見ながら思いました。