タイ バンコク(2)買い物の楽しみ

Thailand Bangkok
バンコク最大の繁華街サイアム。超大型ショッピングモール、広場にテントのナイトマーケット、アスレジャーを売りにしたスポーツブランド直営店などが並び、刺激的な広告が街を演出しています。若者の路上ライブがにぎやかでタイの若者たち、中国や近隣諸国からの観光客、欧米からの観光客、いろいろな国の様々な言葉を話す人たちが集まっていました。
11月とは言え熱帯バンコクの空気は暑く、サイアムは少し上気した開放的な夜の浮かれた気分でした。

路上ライブ

ビルに取り付けられた派手に輝くデジタルサイネージがあたりを照らし、道路の上を高架鉄道が大きな音を立てて行きすぎます。 道路は渋滞して排ガスの臭いが漂い自動車とモーターサイクルでいっぱいです。 この一角はSF作家ウィリアムギブソンが生み出したサイバーパンクな街、あるいは映画監督リドリー・スコットがブレードランナーで視覚化した未来都市の景色のように、節操なく人工着色料のような色が輝き、しかし悲壮感は無く、おおらかに享楽的で、喧騒と高揚感に満ちた場所でした。

サイアム・パラゴンは高架鉄道のサイアム駅に直結した延床面積50万㎡の巨大なショッピングモールです。入り口には派手なクリスマスディスプレイが飾られ、一階にはハイブランドが入居し、フロアの中央ではフランスの化粧品メーカーが大掛かりなポップアップストアを展開していました。スノッブな男女の美容部員があたりを睥睨し、売る気があるのかないのか、それでも自分たちが今フロアの主役であることを意識してはしゃいでいます。

微笑みの国という優しく素朴な雰囲気はここにはありません。動物的で貪欲でぎらぎらとした欲望が明け透けに前面に押し出され、建物を満たしているようでした。

クリスマスディスプレイ

東京と言ってもニューヨークと言っても上海といっても通じる無国籍で華やかな、ハイブランドがハイブランドであることで存在する、消費の魅力に包まれた空間です。物販、飲食、娯楽施設、多種多様なテナントが入居し、加えて特にグローバルな観光客をターゲットに、タイの特産工芸品や高級なアロマ製品を多くそろえたお土産専用フロアもあり、外国の観光客が熱心に品定めをしていました。

エルメスはメインエントランス横。 多くの国外からの観光客が買い物に訪れていました
エルメスの向かいのカルティエと店員
エルメスと共にハイブランドの2トップが来店客を迎えます

タイは第二次世界大戦後に経済成長を続け、近年は鈍化したとはいえ過去10年間の平均GDP成長率は3.3%、政変等の影響で鈍化した年を除けば4.6%(7年間)の成長を続けてきました(日本は過去10年平均0.71%)。その結果としての大量消費社会の拡大。誰もが体験可能な目に見える果実があるとすれば、その一つがハイブランドが集積したショッピングモールではないでしょうか。バンコクにはいくつもの大型ショッピングモールが出来ていました。
ショッピングモールを行き来する人たちには 高価なハイブランドを身に着けている人も多く見られ、現在の日本ではあまり見られない強い物欲と高揚感が漂っているのを感じました。それは僕たちが何十年か前に日本で体験した感覚に重なります。

しかし 良く周りをみると、国内消費だけで盛り上がった当時の日本のそれとは異質の盛り上がり方だと気付かされます。 当時の日本では日本人が消費の主役でした。ショッピングモールもハイブランドの店も日本人が主要な顧客でした。しかしここでは地元の人たちと共に多くの国外からの観光客が、いろいろな言葉を話しながらショッピングモールを行き来していました。

タイ政府は長らく観光産業に力を入れ、世界各国からの観光客を積極的に受け入れてきました。近年はグローバルツーリズムの興隆も影響して、観光客が増大し受け入れることが困難になるほどの規模に達していると聞きました。バンコクは様々な国の人たちが行きかう国際観光都市と化し、大型商業施設もインバウンド需要を前提に開発されているようです。

この巨大な商業施設と過去盛況であった日本の商業施設の差異とは、グローバルな市場を前提に、多様性に富んだダイナミックな 商業活動の場であるか、そうではないかという点。 そう考えると、 バンコクに到着したときからこの街に感じていた捉えがたい混乱した感覚は消え、目の前の多様な物事を落ち着いて受け入れ、興味深く積極的にみることができると思いました。

サイアムに向かうタクシーの中で、バンコク生まれだという若い運転手は英語でいろいろと話しかけてきました。英語が話せない運転手が多い中でなぜ英語を話すのかと聞くと稼げるからと、英語は学校で習っただけだが喋ればなんとかなると単刀直入の答え。 いろいろな国の観光客の中でも日本の女の子は可愛いとか他愛のない話をしながら、翌日の観光のアポを取ろうと持ち掛けてきます。長くにわたってインバウンドを受け入れている、年季の入った国際観光都市に生きる人のリアリティを感じました。

タイ消費社会の成熟と熱気、今世界に渦巻く国際ツーリズム、この二つを掛け合わせて興隆するこの街は、今とてつもなく面白いのかもしれません。

高架鉄道のサイアム駅構内。構内案内看板よりもはるかに巨大なデジタル看板から肌を露出した女性たちがこちらに訴えかけてきます。

(データはJTROによる)

タイ バンコク(3)ハイライフ インキュベーション 新しい世代