タイ バンコク(1)観光装置

Thailand Bangkok
2019年11月22日午後、ヤンゴンから空路到着したバンコクのスワンナブーム空港でタクシー乗り場の列に並ぶと、ヤンゴンの混乱したそれとは正反対に、整理券発行機が稼働し乗客は自動的にタクシーに振り分けられ、すでに街が近代的な一定のシステムに沿って動いていることを予感させます。

空港の無人タクシー乗り場

空気は車の排気ガスの臭い、渋滞、タクシーから見える景色はコンクリートで固められた現代都市です。インドシナ半島の中でただ一国だけ植民地化されずに王政を保ち、第二次世界大戦後から経済成長を続けアジア通貨危機も乗り越えたタイの首都は、経済発展の頂点の姿を現しているかに見えました。

空港から市街地へ

今回訪れたのは、バンコク西部チャオプラヤー河添いの王宮を中心とする旧市街、その東側のバンコク一番の繁華街であるサイアム、東端の近年急発展したスクンビット地区。そして近年再開発され今最も先端を行く場所であるように見受けられたチャオプラヤー河周辺南部です。

観光装置

ホテルの窓から見えるスクンビット地区は、以前は牧場もある街の外れで近年急激に発達を遂げたと聴きました。欧米人が多く泊まるホテルが集中し、ホテルの屋上のプールには泳ぐでもなく水中であるいはプールサイドで歓談する人たちの姿が。大型ビルの前庭に設けられたレストランはソファのような椅子で寛ぐ観光客のためにあります。ハイブランドばかりを集めた大型ビルができ、夜は妖しさと開放感が交じり合った通りに、多くの人が呼び寄せられてきます。この街の外貨を獲得できる重要な産業の一つが観光であること、そして街そのものがどこか享楽的な雰囲気を漂わせたものであることに気付きました。

新しい街 ホテル 屋上のプール
夜の繁華街

街の西部を流れるチャオプラヤー河の東岸から代表的な観光名所ワットアルン(暁の寺)、三島由紀夫の小説“豊饒の海第三部”に登場する美しい寺を河越しに眺められます。ワットアルン周辺には高い建物は無く、華麗な仏塔の姿が空に美しく浮かび上がっています。寺の周辺は建築に規制がされているのでしょうか。

ワットアルン(暁の寺)

この一帯は旧市街であり王宮を中心として、国立博物館、王宮寺院ワットポーがあり、川沿いに南に下ると花市場や中華街を歩くことができました。河にはフェリーと遊覧船がひっきりなしに行き来し、王宮と寺院は壮大な中に華やかで繊細な装飾に満ち、迷路のような仏教用品店の並ぶ路地があり、船着き場が立ち並び、花市場には大量の花がいっぱいに溢れ、青物を扱う市場があり、建物は老化していますが不潔ではなく、活気があり、誰もがイメージする東南アジア市街地、異国の魅力に満ち満ちています。それはハリウッド映画“王様と私”で欧米人が描くインドシナ、シャムの魅力そのものです。

王宮
仏具マーケット
花マーケット
ワットポー

このような魅力を持った一帯は観光資源として位置づけられていることは明らかで、大量の観光客を迎えられるよう整備されており、王宮の前には広大なバスターミナルが設けられ、案内所、両替所、カフェやレストラン、宿泊施設が多くあり、清掃も良くされています。それらは第二次世界大戦終結後からこの国が着々と整備してきたであろう観光装置にほかなりません。

欧米から中国からの観光客 土産物屋 マッサージの看板
船着き場周りを清掃する清掃員。 観光客が捨てるゴミとのいたちごっこ。 無造作に捨てられたごみに顔をしかめたら目が合って思わず二人で苦笑い。

しかし、ここは機械と張りぼてで作られた街ではなく、きれいに整えられ再開発された街でもありません。人が住み生活をし働く場でもある生きた街です。観光計画からはみ出した日々の営みのリアリティこそが旧市街を生きいきとさせる源なのだと感じました。

青物商店街 
旧市街のアパート 旧市街地の住居 縦方向で一戸の長屋(タイに詳しい方から指摘をいただき修正しました)
路地の食卓
王様の肖像 スターバックス 市場の人たち

タイ バンコク(2)買い物の楽しみへ続く